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横浜北仲マルシェ 出店者VOICE 4/「ひと手間」をかけることで得る信頼

横浜北仲マルシェ 出店者VOICE 4/「ひと手間」をかけることで得る信頼

掛川市東山地区で唯一の自園自製茶農家、
田中克典さんがお茶にかける想いとは。

Q.田中さん「お茶」好きですか?

いきなりだね。笑
好きですよ、緑茶が多いです。ご飯の時は毎回淹れるし、水筒に入れて仕事場に持っていったりします。
僕たちは売らないけどお茶屋さんとしては売れるお茶(茎の皮等の出物)で、夏に水出しで美味しく飲めるような仕上げ温度を遊び半分勉強半分でやったりするんですけど、そういうお茶が、うちのまかない茶になります。安いお茶は少し香ばしいくらいが美味しいから、香ばしくのどごしの良い夏向きのお茶ができないかなと、いろいろ試しています。

Q.田中農園を継いだきっかけは?

“もし家が会社員だったら、お茶農家をやりたくても出来ないから”かな。せっかく設備も揃っているし、「とりあえずやってみて合わなかったらやめればいいや」って思いながらはじめました。でもやってみたら、お茶の栽培にしても揉むにしても、自分の性格にあっていたみたいです。22歳で就農して今年で20年目になるけど、半分趣味・半分仕事って感覚で試行錯誤しながらも毎日楽しくやっています。
と、いいながら普段の仕事の感覚は「趣味」の割合が多いかな。
だから「今日も仕事かー」って感覚は少ないですね。

Q.自園自製とはどういう農園ですか?

100%自分の畑で栽培し、自分の所有する工場で加工するという経営形態です。
掛川市の東山地区は粟ヶ岳のふもとに位置する茶専業地帯で、ヒノキで作られた「茶」文字があるほど昔からお茶にゆかりがある土地です。20年程前には10戸以上あった自園自製農家も、みんな共同工場へ編入してしまい、今では僕たちだけになってしまいました。
「自分が育てて揉んだお茶だから、自分のお茶として自分で売りたい」という思いがあって、自園自製の田中農園を続けています。実は、僕たちも共同工場へ入るか入らないかを選択するタイミングがあったのですが、それは自分たちのお茶ではなくなってしまうから、迷いなく断りました。今後も編入する考えはないですね。

Q.「深蒸し茶」とはどういうお茶ですか?

お茶と言っても、「普通煎茶・深蒸し煎茶・玉露・かぶせ」など製法や栽培方法でそれぞれの個性があって、深蒸しは普通煎茶の蒸し時間に比べ、2倍以上の時間をかけて蒸す製法です。
長く蒸すことで茶葉の繊維が柔らかくなるので、蒸した後の揉みや乾燥の工程で、柔らかくて味の濃いところは少しずつ破砕されながら、細かくなっていきます。この細かい茶葉が、深蒸し茶らしい色の濃さと「トロ」っとしたまろやかなコクに繋がります。長く蒸されたことにより渋み・苦味が少ないのも特徴です。
また細かい分、水出しでも色や味をしっかり感じられるお茶です。
淹れ方が難しくないので肩肘はらずにも美味しいお茶を淹れることができますよ

Q.世界農場遺産の「茶草場農法」とはどんな農法ですか?

「ひと手間かけてより高品質なお茶を」という思いから生まれ、掛川市でも長年行われてきた伝統的農法です。秋から冬にかけて茶園の周辺にある「茶草場」の草を刈り、乾燥させて裁断したものを茶園に敷きます。敷かれた茶草は10〜20年ほどの長い時間をかけて分解され土に還るのですが、何年も茶草を敷いて出来た茶園の土は、手にとるとふんわり崩れてしまうほどやわらかく、足を踏み入れるとフカフカしています。
茶園やお茶へのメリットは、土壌改善や除草効果や、夏は保湿、冬は保温効果があります。さらに分解された茶草は有機質肥料の役割も果たします。これを「茶草場農法」といいます。
長年行われてきた一年に一度の草刈りが多様な生物が生息できる特別な場所となり、希少な動植物を守っていることが確認されました。こうした農業と生物多様性が共生していることが世界から評価され世界農業遺産に認定されました。田中農園でも2013年9月27日に茶草場農法実践者に認定されました。

Q.お茶づくりで一番重要な工程はなんですか?

深蒸し茶の工程は、普通煎茶とほぼ同じですが蒸しの時間が違います。
そして「蒸し(蒸熱)」の工程がとにかく一番重要。蒸している時の茶葉・蒸気の量、軸の回転数、胴筒の回転数、傾斜。特に傾斜の角度が一番シビアです。
今刈ってきた葉っぱはどこがベストなのか?を探りながら調整するんだけど、最初の10年は微調整、微調整、微調整の連続。初めの頃は「どうやったら上手く仕上がるか?」と考えながらも、面倒だからデータをとっていませんでした。でも上手くいったこともダメだったことも次の年になると忘れているから、「今日のいい!なんでだろう?あ!こういうことか!」って見つかったものはとにかく全部メモを取るようにして、しばらくはお茶刈り前にノートを見直しながら品質を安定させていきました。
今?今は迷ったときだけ見ますね。
あと、共同工場とかは蒸した時点で拝見をやりますが、僕の場合、茶師は自分一人だし機械のクセも把握しているので、蒸して揉んでいく具合の中で香りや手触り、色、カタチからなんとなくわかるようになりました。
また田中農園での理想の茶葉のカタチがあって、製品のブレをなくすためにお茶をチェックする場所は毎回同じ場所と決めています。

Q.田中さんが目指すお茶はどんなお茶ですか?

すこし遡ると、僕は短大に進学したので、もし4年制ならあと2年間の時間があったわけです。その時、親父から「あと2年好きにしていいよ」って言ってもらえたので、掛川市と姉妹都市だったアメリカのオレゴン州に農家留学に行きました。そこで僕自身のベースというか、お茶に求めていく目標みたいのができたんです。
農家留学では有機農家にホームステイをしました。向こうのサタデーマーケットへ一緒に出店したことがあったのですが、そこでは有機野菜が通常の1.5倍の値段で売られていて、スーパーと比べて確実に高い野菜がどんどん売れていくのを目の当たりにしました。2人の店員さんがほどんど呼び込みをしなくてもトラック満載の野菜が午前中に完売しちゃうんですよ。アメリカのイメージといえば「大量生産・安価」ですが、「小規模生産・高めの価格設定」で販売して生活しているのは、純粋にすごいと思いました。
そういったオレゴンでの生活を経験して「いいものを作ればお客さんに認められて売れる」ということに気づけたから、自分が農家になった今でも「いいものにこだわって作ったお茶は絶対売れる」という思いがあります。これも自園自製にこだわっている理由のひとつですね。お茶はとにかくデリケートだから、無駄な雑味が出ないように繊細に揉む。古い機械だからひとつひとつがすごくシビアな調整ですが、一杯一杯を丁寧に揉んでお茶本来の味を楽しんでもらえるような深蒸し茶を目指しています。

Q.たくさんの商品の中で一番飲んでほしいお茶はありますか?

一番は「初摘み」です。
初摘みの魅力は自然な甘み、香りも甘くて、「お茶ってこんなに甘いんだ」と知ってもらいたいです。
文字通りその年の1日目から2日目に刈ったお茶なんですけど、シーズンの最初ほど、甘み、香りがあって、新緑の香りというか、新茶の季節感を思い出させてくれるお茶です。
それと、お茶屋さんで売られている初摘みのお茶は、この値段じゃ飲めないと思うんです。だから、僕たちの商品としては一番高いお茶ではあるけれど、せっかくなら初摘みを飲んでほしい。
そして田中農園のファンになってくれたら嬉しいです。

Q.お茶を上手に淹れる方法を教えてください

慌てて淹れないで、淹れているときにお茶の香りを楽しむ余裕があるくらいがちょうどいいですよ。
僕たちも茶殻めんどくさいなーって思うときもありますが、お茶ってひと手間かけるだけでものすごく美味しいお茶になるんで試してみてもらえたら嬉しいです。

Q.マルシェに出店しようと思ったきっかけはなんですか?

一番は、歳をとったらやれないって思ったから。
今は両親がいるから畑の世話をお願いできるけど、もしそうもいかなくなった時に僕が家での栽培・製造・販売をやりながら、マルシェまで売りに出てこられるかっていうと絶対に出てこられない。
お茶業界の景気が良くない中で、両親が元気なうちに行動しておかないと生き残れないって感じたからですね。もちろんそれだけじゃなくて、お客さんの反応を直接見られるからとかそういう理由もありますけど、最初に思い描いていた理由と今とで、少し考え方が変わったりしています。
それは日頃お世話になっている出店者さんとの出会いがとてもいい刺激になっていて、マルシェで見る先はお客さんだけではなかったなと今では思いますね。

Q.横浜北仲マルシェに出店していて感じることはありますか?

お客様がすごく優しい。笑
なんだろう、近所の人たちみたいな感じがしますね。横浜って都会的なイメージだけど、実際にお客さんと接して感じるのは田舎っぽい暖かさがあると思います。自分らが田舎の人なだけに伝わってくるというか。商品に関して言えば、お茶のことをちゃんと理解した上で買ってくれている感じがします。会場の特徴かもしれないけど「マルシェで買い物をしよう!」ってお客さんが多いからか、横浜は他のマルシェよりも会話の量が多いです。実際リピートで買いに来てくれたり、注文につながっている数も他のマルシェよりも多くて、イメージが凄くいいです。

Q.田中さんにとってマルシェはどういうところですか?

お客さんにお茶を飲んでもらいながら対面で話ができ、お茶はもちろん僕らのことも知って信用してもらえるこんないい場所はない!って思っています。
両親から学んだことの一つで、大事だと感じているのは仕事以外の世間話なんですよ。
手間だとは思っていないけど、これもひと手間っていうのかな。普通の会社だったら世間話している時間は無駄だと思われるけど、僕たちは会社としてではなく農家としてお客さんと仲良くなりながら、僕たちのことも知ってもらうことが大事だと思います。
温かみを大事にして信頼といいものを提供するっていうのが農家らしいっていうんですかね。個人でやっている僕たちは、農家らしいことを残しながら発展できれば一番いいなって思うから、マルシェは「こんないい場所はない!」って場所です。

Q.マルシェに来るお客様へひとことお願いします。

とにかく一度、試飲をしてみてください。
お茶を飲んでいただいて、味と僕たちを知っていただいて、そこからお茶の楽しさを感じてほしいと思っています。

文・写真 佐藤絵理香

工場でお茶を揉む田中さんの姿は農家であり職人でした!

就農して1年目の二番茶から工場を任され、座学と実践の違いに最初はとても苦労したそうですが、それも今年で20年目。繊細なお茶の葉と会話をするように機械の調整をする姿は、いつもマルシェで出会う田中さんとは違ってまさに職人でした。いいものにこだわってつくられたお茶は裏切りません。ひと手間かけた時間を味わいに、またブースでのお話を楽しみにぜひ立ち寄ってみてください!

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